2021年6月23日 最新データから読み解く「NRIマーケティングレポート」

不動産・保険業界で続くリアル対面営業離れをどう乗り超えるか

不動産・保険業界で大幅に減少する「販売員からの情報」を参考にする人

新型コロナウィルス感染症(以下、コロナ)により、対面サービスである飲食業、旅行業などが苦戦を強いられていることは誰もが知るところであるが、不動産や保険といった対面販売での営業が肝となるBtoC業界においても、苦しい状況が続いている。

図1 不動産・保険の情報検索方法

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1は、商品やサービスを購入する際に参考にする情報をコロナ前の20202月と、直近20212月に聴取をした結果である。右端の「販売員からの情報」を見ると、不動産、保険いずれにおいても、コロナ前と比べて、3pt4pt減少していることが分かる。特に、保険業界においては、公式サイトに次ぐ2番目に参考にされていた情報であったが、2021年の調査では「知人や友人からの評判」が9.9%、「販売員からの情報」が9.5%と僅差で3番手となった。

なかなか広まらないオンライン営業と誰かの意見がほしい生活者

「販売員からの情報」の減少は、明らかに直接販売員と会って営業を受ける「リアル対面営業」が忌避された結果だろう。ただ、コロナ禍が始まって間もなくリアル対面営業は控えられ、「オンライン営業」(リモート形式での対面営業)へ切り替えるべき、との提言は各所で叫ばれていた。しかし、1年たった今、このスコアを見ればオンライン営業がリアル対面営業を代替できていたとは言い難い。

リアル対面営業が減少し、オンライン営業も広がらないのならば、完全非対面であるWEB上の情報検索に流れるのかと思いきや、増加したのは「知人や友人からの評判」であった。むしろWEB媒体である「SNS以外の口コミ」のスコアは下がっている。販売員からの情報が得られにくくなった状況下でも、やはり「"信頼できる"人の意見が欲しい」と思うのは、不動産、保険といった、将来長い付き合いになる対象に対する意思決定だからであろう。

アフターコロナを見据えたオンライン営業の拡大と顧客推奨の仕掛けを

では、今これらの業界が注力すべきことは何だろう。一つは、やはりオンライン営業の拡大だ。図2は、生命保険に関する調査結果だが、全体の24%がオンラインでの案内に前向きで、特に20-30代ではそのスコアが高い。また、仮にコロナが収束した後の世の中においても、オンラインの利便性を享受してしまった若年層では、オンライン"の方がいい"という声は一定根付くだろう。若年中心にコロナ感染予防のための非接触ではなく、オンラインの利便性を生かした新しい営業スタイルの確立が求められる。

図2 生命保険におけるオンライン営業

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もう一つのカギは、先の「友人や知人からの評判」だ。以前より重要性は重々認識されていた他者推奨だが、一層重要度を上げていると認識されたい。ただ、いずれもなかなか気軽には話題に出しにくい業界でもある。そこで、企業としては顧客推奨しやすいきっかけを企業側から仕掛けてはどうだろう。例えば、職域や地域コミュニティなどに一斉に情報提供することで、そのコミュニティの中で話題化させたり、話題化しやすいコンテンツや広告を提供することも一つだ。何か口火を切らせるためのきっかけづくりにも注力して、顧客推奨を仕掛けていくことで、縮小するリアル対面営業をフォローしていきたい。

出所)NRI インサイトシグナル調査(関東20-69歳男女)

NRI マーケティングサイエンスコンサルティング部 原野朱加

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