2020年5月 8日

コロナ禍の中、求められる休校対策!

休校が続く中で、子どもに対する不安が募る保護者

安部首相の要請により3月2日から全国で休校が始まったことを受け、急遽子どもたちが自宅で過ごすことが決まりました。また4月に緊急事態宣言が発令され、ゴールデンウィークが明ける5月6日まで休校が続いていましたが、5月4日に緊急事態宣言の延長が確定し、多くの自治体においてさらに5月末までの休校延長となりました。

子どもが長らく学校に行けなくなることで、保護者は様々な心配を抱えています。小中学生の子どもがいる保護者1466人に対して、休耕期間中、子どもに対して心配なことを聴取したところ、「学習機会の不足・学習の恐れ(67%)」「運動不足・体力低下(65%)」「生活リズムの乱れ(59%)」が心配される項目として上位横並びで挙げられています。

休校期間中、子どもに対して心配なこと(複数回答)

000280_001.png※小中学生の子どもがいる人(1466人)のみ聴取

最も不安なのは「学習機会の不足・学習の遅れ」

さらに子どもに対して最も心配なことを聴取したところ、「学習機会の不足・学習の恐れ」が34%と最も高く、2番目に高い「生活リズムの乱れ」より+15%も開きがあることが分かりました。やはり親としては、学校に行けなくなってしまうことによる勉強面の不安が最も大きいというのが本音のようです。

休校期間中、子どもに対して最も心配なこと

000280_002.png※小中学生の子どもがいる人(1466人)のみ聴取

休校対策として求められるのは「同時双方向型」の学習支援

文部科学省から4月7日に示された「文部科学省 緊急経済対策パッケージ」では、学校休業時における子どもたちの「学びの保証」として、「新型コロナ感染症による学校の臨時休業などの緊急時においても、子どもたちの学びを保障できるよう、オンライン等も活用した家庭学習と、教師による対面での学習サポート・学習状況の把握の組合せにより、子どもたちの学びを支援します。併せて、ICTを活用し、家庭等でも学び続けられる環境整備を急ピッチで進めます。」のように記載されており、以下の学習支援が検討されています。

①特定の学年・クラスごとに登校日を指定して、学校で授業を受ける
②ご家庭に紙の教材を配布し、電話・家庭訪問等で教師がサポートする
③NHK Eテレ等のテレビ放送による授業を受ける
④各教科の参考となる動画が配置されたWebサイトで学習する
⑤パソコン/タブレット端末等を利用した同時双方向型の遠隔授業を受ける

上記の施策内容について、保護者に最も望ましい施策を聴取したところ、以下のような結果が得られました。

休校時における子どもの学びを止めないための支援として最も望ましい施策

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※小中学生の子どもがいる人(1466人)のみ聴取

調査結果からは、「⑤パソコン/タブレット端末等を利用した同時双方向型の遠隔授業を受ける(45%)」が最も高く、次に「①特定の学年・クラスごとに登校日を指定して、学校で授業を受ける(27%)」が来ています。紙の教材配布、テレビ放送による授業、専用Webサイトでの学習といった子どもたちが一人で学ぶ「一方向型」または「オンデマンド型」の支援ではなく、遠隔授業や実際に登校して授業を受けるといった先生と子どもたちのコミュニケーションが発生する「同時双方向型」の支援を望む声が多いことが分かります。

パソコンやタブレット端末の用意が学習支援の喫緊の課題

「同時双方向型」の学習支援が求められるものの、緊急事態宣言下の他社との接触自粛の中では、子ども達が集まって学校で授業を受けるのは現実的ではなく、やはり半数程度の保護者が求めたように、パソコンやタブレット端末を利用した遠隔授業を実現させることが必要です。しかし、遠隔授業の実施には、家庭にてパソコンやタブレット等の端末が必要になります。現時点でどの程度の家庭にて遠隔授業が実施可能となるか調査したところ、以下のような結果が得られました。

ご家庭でお持ちのパソコン/タブレット端末を学習用に使用することが可能か(世帯年収別)

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※小中学生の子どもがいる人(1466人)のみ聴取

全体では、子ども専用のパソコン/タブレット端末があり学習用として使用できる家庭が27%、子ども専用の端末は無いが親の端末を学習用として使用できる家庭が38%おり、合計65%の家庭にて遠隔授業が実施できそうということが分かります。
ただし、この施策は家庭の経済状況によって格差が生じることも分かりました。世帯年収1000万円以上の家庭では子ども専用端末がある家庭が42%おり、合計82%の家庭にて遠隔授業が実施可能です。しかし、世帯年収400万円未満の家庭では、端末を学習用として使用できるのは半数程度に留まることが分かります。
義務教育課程においては、家庭の経済状況に依らず、すべての子ども達が等しく教育を受けることが必要です。新型コロナ対策の学習支援には、授業方法などのソフト面の対策だけでなく、家庭へのパソコンやタブレット端末の貸与を含めたハード面の対策も至急求められるところになります。

出典)野村総合研究所 2020年4-5月期シングルソースデータ(関東エリア 20-69歳、小中学生の子どもがいる人:N=1466)
(林 裕之)