Marketing Analysis Contest

マーケティング分析コンテスト

2016

審査結果・レポート公開中

実施レポート

マーケティング分析コンテスト2016 詳報

さまざまな視点から生活者の購買要因を掘り下げてデータを分析し、斬新なビジネスの法則や新しいマーケティング指標等の発見を競う「マーケティング分析コンテスト2016」の最終審査会が2016年12月13日、野村総合研究所本社にて開催された。10度目の開催となった今回は、過去最多の82件のレポートがあつまり、予備審査を通過した19作品による激論の審査会となった

第10回目を迎えた今回は記念大会と位置づけ、これまでの「消費行動データ」と「企業の広告出稿実績」に加え、「2012年からの時系列データ」ならびに各生活者による「Webサイトへのアクセスログデータ」を初めて提供した。そのためか、レポート提出は昨年の67作品を大きく上回る82作品となり、過去最大となった。企業が単独で行う広告・マーケティング領域でのコンテストとしては、引き続き国内最大級であるといえよう。

毎年、特徴として挙げているが、今回はさらに作品のレベルが高かったようで、審査員からは「これまでの基準で予備審査すると、ほとんどの作品が最終審査まで進んでしまう。そのため、非常に厳しい基準で選定せざるを得なかった」という声が多く寄せられた。また、内容についても、分析手法やインプリケーションに一捻りした作品が多く、「なるほど」という言葉が、審査中もよく発せられていた。

さて、今回も例年どおり11月中旬から6人の審査員による予備審査が行われ、19組の作品が最終審査に進んだ。今年も同じ作品に集中することもなく、あらゆる角度から、各自が選定いただいたようだ。

最終審査会では1作品ずつ丁寧に議論がなされ、分析結果が有益なもの、分析ロジックやプロセスの優れたもの、視点や仮説設定が斬新なもの、ビジネス実務への展開が可能なものなど、多面的な評価が行われた。また、今年は時系列データやアクセスログデータの活用についても評価基準とし、審査がおこなわれた。

その後、最終投票がおこなわれ、最優秀、優秀については、全会一致で選定されたものの、最後の佳作の選定時に大きく意見が分かれた。作品のレベルはほぼ同等であり、審査の視点により分かれただけのため、事務局との協議のもの、今回は特別に3作品を佳作として選定することとなった。

最優秀賞には、専修大学大学院 文学研究科 北條 大樹氏、田中 利夫氏、杣取 恵太氏、坂本 次郎氏による「非耐久消費財におけるテレビ広告の統合効果と年次的推移-階層ベイズモデルによるメタ分析&メタ回帰分析-」が選出された。オーソドックスではあるものの、3ヵ年のデータをうまく活用し、難しいテレビの効果を推計しており、結果としての有用性も最優秀賞への選出へと繋がった。

優秀賞には、慶應義塾大学大学院 商学研究科 河塚 悠氏による「パッケージの効果測定-リニューアルとライン拡張のコンテクストに着目して-」が選出された。河塚氏は2014年にも最優秀賞を受賞しており二度目の受賞となった。過去例のなかった“パッケージの変化”に注目した作品であり、そのユニークさが最大の受賞理由となった。

佳作には3本が選出された。まず1本目は慶應義塾大学 経済学部 経済学部 小佐野 寛崇氏、三谷 毅氏、片岡 あまね氏、久保田 仁氏、安田 萌々花氏、柳 博俊氏による「段階的潜在クラスモデルを用いた多年度分析-新商品の投入と浸透-」が選出された。段階的潜在クラスという特徴的な手法を用い、膨大なデータを処理するという点に評価が集まった

続いて、明治大学 総合数理学部 新井 啓太氏、川崎 雄大氏、髙橋 恵美氏、酒巻 芳輝氏、同じく商学部 岩田 翔氏による「CMクリエイティブ特性が特定の消費者グループへの広告効果に及ぼす影響-ビール業界へのCM戦略の提案-」が選出された。非常に丁寧に時間をかけて分析しており、その努力に感銘するとともに、結果を具体的な提案に繋げようとする点も選定理由になった

最後に、山形大学 人文学部 比嘉 愛七氏、秋葉 拓哉氏による「携帯電話のキャリア選択における広告の効果分析と広告出稿戦略の提案」が選出された。消費者行動理論を当てはめる点が興味深く、今後、実践への応用性が高いという点が評価に繋がった。

審査会終了後、各審査員からは「今年も学部生の躍進に大変驚いた(実際に、最終審査に進んだ作品のうち73%が学部生)。経済学部や商学部はもちろんだが、心理系や理工系からの参加も多いことも特筆に価する」との声が寄せられた。審査委員長からは「今年は例年にも増して参加者のレベルが高く、これまでなら優秀作品に選ばれてもおかしくない作品も予備審査の段階で落さざるを得なかった。そんな中、最終審査まで進んだ作品は、どれも着眼点や結果の解釈に一捻りしているものが特徴であり、読んでいて非常に楽しい作品が多かった。この研究が本コンテストだけで終わることなく、実践の場での活用や、学術論文としてより深い探求に進んでいってもらいたい」ということで、総括した。

「マーケティング分析コンテスト2016」各賞受賞作品(敬称略)

Grand Prize

最優秀賞

  • 「非耐久消費財におけるテレビ広告の統合効果と年次的推移-階層ベイズモデルによるメタ分析&メタ回帰分析-」

    専修大学大学院 文学研究科心理学専攻
    北條 大樹、田中 利夫、杣取 恵太、坂本 次郎

審査員コメント

「非耐久消費財全体、商品カテゴリーごとにTV広告の効果があるかという点を解明している。3ヵ年の分析など本データをうまく活用している点も高く評価できる」

「オーソドックスな枠の中という感じもするが、商品カテゴリー別、統合レベルでTV広告の効果を推定している点が評価できる。結果もよく書かれている」

受賞者のコメント

素晴らしい賞にご選出頂きありがとうございます。記念すべき10回目ということで隔年3年分の貴重なマーケティングデータを分析させて頂き、大変勉強になりました。これを励みに今後も精進いたします。ありがとうございました。

First Prize

優秀賞

  • 「パッケージの効果測定-リニューアルとライン拡張のコンテクストに着目して-」

    慶應義塾大学大学院 商学研究科 後期博士課程
    河塚 悠

審査員コメント

「分析の視点がユニークで面白い。3年間のデータもうまく使っており丁寧。パッケージが変化しないブランドを入れても良いかと思うがこのオリジナリティの高さは評価すべき」

「パッケージの効果を消費者行動の研究の知見を踏まえて、かつ、消費者の異質性も含めて多面的に分析している。実務的にも有用な結果が得られている」

受賞者のコメント

この度は優秀賞に選出していただき,誠に有難うございます。御指導いただきました諸先生方に心から感謝致します。頂戴いたしました御指摘を踏まえ,今後研究に精進してまいります。

Second Prize

佳作

  • 「段階的潜在クラスモデルを用いた多年度分析-新商品の投入と浸透-」

    慶應義塾大学 経済学部 経済学科
    小佐野 寛崇、三谷 毅、片岡 あまね、久保田 仁、安田 萌々花、柳 博俊

審査員コメント

「段階的潜在クラスの妥当性は未知な部分あるが、マーケティングへのインプリケーションというよりは膨大なデータに対するアプローチとして評価できる。結果もそれなりに面白い」

受賞者のコメント

この度はご選出頂き誠にありがとうございます。分析量で誰にも負けないよう取り組んだ結果を評価して頂けたのだと思います。助言を下さった星野先生、先輩方、大変ありがとうございました。今後も精進して参ります。

Second Prize

佳作

  • 「CMクリエイティブ特性が特定の消費者グループへの広告効果に及ぼす影響-ビール業界へのCM戦略の提案-」

    明治大学 総合数理学部
    新井 啓太、川崎 雄大、髙橋 恵美、酒巻 芳輝
    明治大学 商学部
    岩田 翔

審査員コメント

「非常に地道にデータに向き合った努力には感服する。“特徴量”という定義も面白いし、丁寧に分析している。具体的な提案を行っている点も評価できる」

受賞者のコメント

この度は素晴らしい賞にご選出頂きありがとうございます。
櫻井先生、原先生をはじめとするたくさんの方々の支えでここまで来れました。
これを糧に今後ともデータ分析の道を精進して参ります。

Second Prize

佳作

  • 「携帯電話のキャリア選択における広告の効果分析と広告出稿戦略の提案」

    山形大学 人文学部
    比嘉 愛七、秋葉 拓哉

審査員コメント

「関与と解釈レベル理論を結びつけているのはやや無理があるが、消費者行動理論を当てはめて説明しようとする姿勢は評価したい。実践的であり、今後深掘りするのに面白い発見でもある」

受賞者のコメント

この度は「佳作」という過分な評価をいただき、大変嬉しく光栄に思っています。
これまでご指導いただきました柴田聡先生をはじめとする、ご協力下さった先生方に心から感謝いたします。
今回の受賞を励みにして、今後も精進してまいりたいと思います。

最終候補作品

  • 「一次情報コンテンツが消費者の購買行動に与える影響の分析-コンテンツマーケティング活用への示唆-」

    横浜国立大学 国際社会科学府 博士課程前期 酒井 俊伸

  • 「電力自由化における潜在顧客を顧客化のするための広告戦略の提案」

    中央大学大学院 理工学研究科 及川 裕之

  • 「シングルソースデータを用いた消費者“インサイト”の見える化
    ~消費者の行動様式から見た“潜在的消費価値観”の検証とCM戦略の考察~」

    成蹊大学 経済学部 4年 真下 準紀

  • 新TVCMが生活者に与える影響~ハーゲンダッツによる分析事例~

    秋田県立大学 システム科学技術学部 4年 藤原 和樹

  • 動画サイト利用者の消費行動と広告戦略

    名古屋大学大学院 環境学研究科 1年 鬼頭 一生

  • 消費意思決定における学習過程と記憶形成について-「CM・商品特性」の事例ベース意思決定モデルによる分析-

    関西大学 経済学部 3年 小野 雄大

  • 消費者価値観別にみる購入意向と関連のある広告媒体の調査(人気化粧品ブランド“マキアージュ”を例として)

    秋田県立大学 システム科学技術学部 2年 白井 里奈

  • 販売増加によるポジション変化シミュレーション~多次元尺度法を用いた代替財の競合性分析~

    成蹊大学 経済学部 4年 真下 準紀

  • サービスのブランドイメージの向上を目的としたメディア戦略の考案〜「旅行」を例として〜

    東京大学大学院 工学系研究科 修士1年 増井 紀貞

  • 購買前情報検索行動がその後の購買行動に与える影響

    慶應義塾大学 商学部 4年 田川 理沙

  • ノンアルコールビールにおける消費者の変化について-多次元項目反応理論を用いて-

    同志社大学 文化情報学部 4年 本林 英和

  • 消費者の購買意向と購買実態の乖離は本当に生じているのか?~マルチレベルモデル分析による検討~

    甲南女子大学 人間科学部 3回生 森川 栞奈

  • どうなるテレビ!!ネット動画利用の現状と未来

    慶應義塾大学 商学部 4年 戸塚 千裕

  • 【2016年度版】「買う」と言ったのに「買わなかった」人たちに届くメディアの変容

    青山学院大学 社会情報学部 4年 竹本 悠太