2018年12月 7日

テレビCMはきちんと見てる?

テレビCMが信頼できるという人は、全体の56

さて、2018年9月に"デジタル広告は信頼できる?"と題して、デジタル広告について生活者の反応を分析しましたが、「それならテレビ広告はどうなのか?」というご意見をいただきましたので、今回はテレビCMについて、生活者の反応をご紹介いたします。

まず、テレビ広告の信頼性についてですが、導入までに先日の結果を再掲いたします。

デジタル広告とテレビ広告の信頼度

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デジタル広告の13%に対し、テレビ広告は56%と、信頼度は圧倒的に高いのが分かります。では、前回もご案内いたしました"広告を見た後に取る行動"について、テレビ広告とデジタル広告を比較する形で集計してみます。

広告を見た後に取る行動

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デジタル広告では、商品やサービスをよく買ったり利用したりする人は全体で3.1%。たまに買う人まで入れると10.2%。買うまでいかなくても、調べるなど実際に行動する人まで入れると28.3%と全体の3割程度になります。一方、テレビ広告では、同じく実際に行動する人は、35.8%となり、デジタル広告とそれほど大きな違いはありません。但し、商品やサービスの名前を覚えるようなことはほとんどない、という人を比べると、テレビ広告の26.5%に対し、デジタル広告は46.8%となっており、"伝える"という面では、テレビ広告に大きく軍配が上がります。

続いて、自分の興味がある広告が放送(表示)されるのかを集計してみます。

自分に興味のある広告を見かけるか

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自分の興味がある商品を見かける(よく見かける+やや見かける)と答えた人を比較すると、デジタル広告の40.2%に対し、テレビ広告では47.3%となっています。デジタル広告では、個人個人のWebサイトの行動履歴やサービスへ登録した属性情報などにより、商品やサービスに関心のある人に広告を届けることができるターゲティング広告という特徴があるにも関わらず、興味のある広告を"見かける"という面でも、テレビ広告に軍配が上がるようです。

動画放送サービスとCMスキップ率の影響とは

それでは、テレビ広告はバラ色なのか、というとやはり課題も見られるようです。

テレビ広告に対する生活者の反応

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まずは、テレビ広告に対する生活者の反応を調査しましたが、こちらは昨年同時期のデータがありますので、昨年との比較で分析してみましょう。すると、"質の高いテレビCMが楽しみである"や"商品の選択に迷ったときは覚えているCMのものをチョイスする"という声が高まっている一方で"商品を知るのにCMは有用ではない"、"質の低いCMを見るのは不快"という声も増えてきております。また気になるのは、"CMは不要であるが、ザッピングやスキップをすれば問題ない"という意見が拡大している点です。このCMスキップについて、もう少し深堀りしてみましょう。

まず、どのジャンルの番組をよく録画するのかを調査してみました。

番組のジャンル別録画傾向

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昨年と比べて大きな変化はないもののスポーツやバラエティに比べて、映画、ドラマ、音楽といったジャンルの録画率の落ち込みが大きいです。このあたりはわざわざ、テレビ放送を録画しなくても、amazonプライムを始めとした動画配信サービスで見ればよい、というスタイルの普及が大きく、テレビ広告を見てもらう、という面では課題ではあります。

続いて、CMのスキップ率も調べてみます。アンケートへの回答ではありますので、機械によるデータではありませんが、生活者の意識としてどの程度の感覚なのでしょうか。

テレビCMのスキップ率

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昨年との比較ということでは、極端な変化はありませんが、それでも常にスキップする、8割以上スキップする、という方は2017年では71.0%、2018年では72.8%となっておりますし、CMをスキップしない、という方は7.1%から5.4%まで低下しています。やはりこちらも、テレビ広告を見てもらう、という面では課題になっているでしょう。

なお、少し脱線しますが、録画した番組をいつ見るのかについても調査してみました。

録画した番組を見るタイミング

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すると、約7割以上の方が、1週間以内に視聴する、という結果が得られました。やはりほとんどの方が、次の回が放送される前に視聴したいということですね。

ということで、今回はテレビ広告を中心に分析してまいりました。デジタル広告では"信頼度"に大きな課題がありましたが、テレビ広告では"見てもらう"という面で課題があるようです。

出典)野村総合研究所 2018年9-10月期シングルソースデータ(関東エリア 20-59歳:N=3,803)、2017年9-10月期シングルソースデータ(関東エリア 20-59歳:N=1,972)。なお、録画に関する設問については、録画機を保有している人に限定して集計。(松本 崇雄)